人生の中で、後藤神父さんのような「スケールの大きい人物」に出会う機会は滅多にありません。殻に閉じこもって安定しようとする内向きな今の時代に、「外に目を向けて、チャレンジしろ」と、ご自分の人生全体をもって私たちを鼓舞しつづけている。本当の「大物神父」に、この映画で是非であってください。
菊地功(カトリック東京大司教区 大司教)
戦争と家族。信仰と差別。教育と寛容。そして他者との共存。神父の86年の生涯は、まさしくこの国の現在を照射する。優しさを持ち続けることはこれほどに難しく、そしてこれほど自然だ。
森達也(作家・映画監督・明治大学特任教授)
この映画の監督・渡辺考(通称・考さん)とは、NHKのカズオ・イシグロ特集、西田幾多郎特集を通じて知り合った。ひょうひょうとした人柄のなかに、独特の毅然さを持った人である。一緒に仕事をして、考さんのドラマツルギーは、過剰に説くことではなく、登場人物の時間軸をして自ずと語るべきことを語らしめる、というものだとわかった。ここでも、後藤文雄という知る人ぞ知る稀代の国際人に光をあて、彼自身が生きた戦中・戦後史の時間軸と、ポル・ポト時代を生き延びたカンボジアの人々の時間軸が交差する中で、それぞれの戦禍が個人の心の深部に切りつけた傷と、そこからの治癒が静かに描かれる。もうひとつの考さんドラマツルギーの肝は、その外見からはすぐには想像できない、みずみずしい青春への憧憬である。カーテンを揺らす風、夕焼けの残照、遠くの十字架、木立の中を走り去り、振り返る少女。誰の心の中にでもひっそりとしまわれている光の粒たちだ。理知を共有するための道具であるはずの言葉が、感情による分断を煽る道具と化してしまった現在、何が回復されなければならないのかをストレートに問いかける、今まさに見るべき映画として見た。
福岡伸一(生物学者・青山学院大学教授)
人の幸せに生きる人生。その源流を探っていくなかで伝わってくる戦争の悲惨さ。罪のない子ども達へ戦争が残した傷。カンボジアの悲しい歴史。そんな全てを真正面から受け止めて生きてこられたゴッちゃん神父の生き方。映画の最後で語られたご自身の幸せについての言葉が、深く心に響きました。
佐賀龍彦(歌手・LE VELVETS)
ゴッちゃん神父の表情にも生き様にも、一点の計算も厭らしさもない。ただ目の前の、血のつながらない子ども達に無償の愛を注ぎ続けた。
ポル・ポト政権下で、「殺される時はどうしたらいいのか、目をつぶるのか、万歳をするのか」としか考えられなかった少年が、ゴッちゃんに育てられ、輝く目をする大人になった。愛は、子ども達の未来につながっていく。ゴッちゃん神父のストーリーを知ると、誰もが自分の中の善のスイッチを押したくなるのでは。
教来石小織(NPO法人 World Theater Project 代表)
自分が泣いても世界から悲しみは消えない
けれど
この子の涙をぬぐうことはできる
と
ゴッちゃんは
目の前の子を抱きしめる
人の痛みを
我が事のように
思える
そんなかみさまのような
ひとのことを追いかけたドキュメンタリーである。
人を愛したり
抱きしめるのに
理由はいらない
ただ
そうしたいからなのだ
そんな当たり前の流れで
ゴッちゃんは学校をつくり
難民の子の父親になった
わたしもそんな風に
たくさんのこどもからお母さんと呼ばれるような
愛があふれる人になりたい
うまくできるかどうかわからないけど
なって欲しいって言われたら
やっぱりとにかくぎゅっと包んじゃうのだ
血がつながってなくっても
それはそれで
親子って呼んでいいんだと思う
大切なのはそこに流れる愛だから。
一青窈(歌手)
時代の波に翻弄されながら大事な人を亡くし、そして新たな家族と出逢う。
不条理な事だらけの世の中で、暗闇の中にも「愛」は人の心に育まれ続けるのだと信じさせてくれる。
鶴田真由(女優)